原風景


昨日売店へ昼飯を買いに行くとき、小雨の中傘を差さずに急ぎ足で歩いていたら、かすかに雨の匂いを感じた。


芝生を張った中に通路があるので、草が雨に濡れたときに発する匂いなのかもしれない。


子供の頃故郷でかいだことがあるようなないようなそんな記憶も曖昧な匂いなのだが、それは私の意識の中ではしっかりと『雨の匂い』として定義付けされている。


人は必ず原風景を持っていると言われるから、きっと同じようなものだろう。


私にも原風景はある。
ただ、大人になってから気付いたのだが、それは子供の頃過ごした故郷の風景とは明らかに違う。それは都市でも街でもなく、間違いなく日本の田舎の風景なのだが、私の故郷とは違うのである。


たぶんそれは実在する風景ではないのだろうな。原風景に近いものはあるかもしれないが、同じものはきっとない。実在のものと重なった瞬間原風景ではなくなってしまう気がする。


原風景。それは心の中にあるもの。
誰もが皆そうなのかはわからないが。