雲上の楽園

期待した観光地が思ったほどでもないことはままある。
そこに関するいろいろな知識を頭に入れた時おおまかなイメージが出来上がる。それで、実際に訪れたときにそのイメージと著しいギャップが発生すると『期待ほどでもない』と感じるのだろう。

それとは反対に、まったく知識もなくいきなり現実の風景が先にやってくると、その風景がすさまじいものであればあるほど驚く。


今回の東北行で、八幡平の上から下りてきたとき、高原に突如現れたこの風景にはとても驚いた。


廃墟である。


あまりに驚いたので調べてみた。


昔、ここには松尾鉱山という硫黄を採掘するヤマがあった。昭和20年代後半から30年代初頭にかけてが最盛期で、その頃には1万5千人の人が働いていたという。この廃墟の群れは、彼らに用意された社宅で『緑ヶ丘アパート』といった。

高原上の不便な土地で労働力を確保するため、従業員への福利厚生は非常に重視されたらしい。当時としては鉄筋コンクリートの集合住宅など時代の最先端をゆくものだったようだし、学校や売店、病院等生活に必要なものはすべて揃い、麓の国鉄(当時)の駅からは専用の鉄道が敷設され、採掘された硫黄の運搬の傍ら、彼ら従業員も運んだ。『空中都市』『雲上の楽園』と称されるほど隆盛を誇った。

しかし、昭和40年代中盤、河川の汚染等公害問題を引き起こしたことをきっかけにヤマは閉山、会社も倒産し、労働者は全員ここを離れたが建物や構築物はそのまま残された・・・。


正直、訪れたのが夕方だったこともあって、非常に不気味に感じた。


長崎には、一つの島全体が廃墟になった場所があるという。やはり鉱山の閉山によるものらしい。


松尾鉱山の廃墟のレポへ勝手にリンク。

ついでに長崎の島のレポへ勝手にリンク。