入院顛末記 その1


我が家ではまだ水銀柱式の体温計を使っている。37の目盛りだけが赤で表示されている昔懐かしいあれだ。でも、自分の体温を測ったときに銀色の棒が右半分を超えたところまで行くなんて一度も記憶にない。

39度5分。
少し身体の変調を感じて勝った日としては珍しくJリーグタイムを見てすぐ寝たのに、全然好転しないばかりかいきなりどん底まで急落したようだ。頭が激しく痛む。

さしあたり妻に近くの総合病院に連れて行ってもらい急患扱いで診てもらう。血液と尿の検査だけでは原因がわからないとの由。これも生まれて初めて解熱用の座薬を入れてもらい、一旦落ち着いたところで帰宅する。

不思議なことに熱さえ下がれば何ともない。
咳も鼻水もまったく出ないし、嘔吐感もまるでない。


翌日、目覚めた頃には解熱剤がまだ効いているらしくさほどでもなかったが、日が昇るにつれぶり返してくる頭痛と悪寒。あっという間に元の状態だ。

一旦起き上がって蒲団の脇の畳に何気なく視線を落とすと何かおかしい。こんな所に重い物を置いたことなんかないのになんで凹んでいるんだよ。そう思いながらよく見ると凹んでいるのはそこだけではない。あっちもこっちもそこら中が凹んでいるのだ。でも触ってみると全然凹んでなんかいなかった。そう熱のせいで眼のピントが合わなくなってきたらしい。

15分後ワタシは救急車の中の人になり昨日診てもらった病院へと向かっていた。

運ばれた病院でもまったく回復に兆しすらなくひたすらのたうち回る。頼みの座薬も1個では効かず間を置かずに2個目を入れるハメになり、あえなくそのまま入院と相成った。



で、ここまでの2日間で、生まれて初めての体験を既に3つもしている。

39度5分はたぶん幼児の頃を除けば人生最高の体温。(最高と書くと何か変だが最も高いという意だからしょうがない)ワタシは元々平熱が35度台後半〜36度台前半と低い。よって風邪の発熱なんかでもせいぜい37度を少し超えるくらいしか出ないのだが、それでも相当きつい。


例えるなら、平熱時のワタシが、

・伸二のパスセンス
闘莉王の高さ
・暢久の強さ
・達也のスピード
・ワシントンの決定力
・啓太の運動量
・永井の容姿
・山岸の頭脳

を兼ね備えているとすれば、風邪で発熱時のワタシは、

・暢久のパスセンス
・達也の高さ
・永井の強さ
闘莉王のスピード
・啓太の決定力
・伸二の運動量
・アレックスの容姿
・岡野の頭脳

くらいに(とは言っても一部ちょっとそう悪くもないものも交じっているが)なってしまうのである。
ましてや39度5分ということは、

闘莉王の頭髪
闘莉王の頭髪
闘莉王の頭髪
闘莉王の頭髪
闘莉王の頭髪
闘莉王の頭髪
闘莉王の頭髪
闘莉王の頭髪

これくらいもの凄いことだと解釈していただければ幸いである。


2つめは座薬。
これもワタシの記憶にない幼児の頃は除く。ロウブロウな話で恐縮だが、入れたあと次の瞬間それが出ていってるのか入っていってるのか一瞬わかんなくなりますね。あと、やっぱ入れたあとって暫くトイレには行かないほうがいいんだろうか、とかいらんことまで考えてしまう。


3つめは救急車。
患者としては、というか幸いワタシの身近には健康な人が多かったためか付き添いでも乗ったことがなかった。因みに乗ったのはトヨタのハイメディック。詳しい仕様はマニアではないのでわからないが、セルシオと同じV8エンジンにエアサス装備と車としてのスペックも実は凄い。状況が状況だけにまったく観察する余裕などなかったが少なくともエアサスの恩恵だけは十分に体感できた。


てなことで入院生活については次エントリへと続く。